とにかくうちに帰ります 津村記久子 ☆
切ないぐらいに、恋をするように、うちに帰りたい。豪雨の日の帰り道を描く表題作ほか、働く日々の悲哀と人々の結びつきをめぐる芥川賞作家の最新作品集。
とにかくうちに帰ります
2012年2月発行 新潮社 182p
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
豪雨で帰宅困難になった人たちの心模様を描く表題作はじめ、それぞれの日々の悲哀と小さな誇り、職場の人たちとのすれ違いや結びつきを丹念に描き出す6篇。働き、悩み、歩き続ける人たちのための物語集。
【目次】(「BOOK」データベースより)
ブラックボックス/ハラスメント、ネグレクト/ブラックホール/小規模なパンデミック/バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ/とにかくうちに帰ります
感想
まじめなのにそこはかとなくもれてくる
可笑しみがいい感じ。
津村さんの小説はほんのりと面白い、っていうのが
全体的な印象。
「職場の作法」は小規模な職場で起こるあれこれの話で、
まじめに仕事に取り組む大切さ・尊さが
じわじわと響いてきます。
表題作は大雨の中帰宅困難に陥った
会社員(と子供)の話。
高揚感や疲れた感などが描かれているのだけれど、
状況の克明な描写や
おかしな会話の作り上げ方、
そういった時の気持ちに対する洞察力が凄いな、と
思いました。
ちなみに、これが書かれたのは大震災前です。
(初出は2009年3月)
「バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ」は
主人公と同僚二人がマイナーなフィギュアスケーターを
応援する話。
私がフィギュアファン、ということに関係なく
面白かった!
そのフィギュアスケーターに対してもつ熱意が
三者三様で、その3人の距離感も絶妙でした。
- [2012/03/31 00:00]
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まともな家の子供はいない 津村記久子
まともな家の子供はいない
2011年8月発行 筑摩書房 220p
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
「一週間以上ある長い盆休みはどう過ごせばいいのだろう…気分屋で無気力な父親、そして、おそらくほとんど何も考えずに、その父親のご機嫌取りに興じる母親と、周りに合わせることだけはうまい妹、その三者と一日じゅう一緒にいなければならない。…」14歳の目から見た不穏な日常、そこから浮かび上がる、大人たちと子供たちそれぞれの事情と心情が、おかしくも切ない。
【目次】(「BOOK」データベースより)
まともな家の子供はいない/サバイブ
感想
失業中で家でゴロゴロしている父親と
いっしょにいたくなくて
図書館や友だちの家を転々とする
中3女子・セキコ。
でも
自分の家だけがヘンと思っていたけれど
あちらこちらの友だちの家も割とヘン。
子供たちは親の勝手な都合に傷付いて怒っているんだなぁ。
我が身を反省せねば(笑)。
でも子供たちは
自分たちにとって理不尽と思われることに
怒りつつも それにより
前へ向かうエネルギーを得ていきます。
若さのなせる技でしょうか。
彼女ら・彼らの怒りがまぶしいです。
- [2012/01/10 15:13]
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ワーカーズ・ダイジェスト 津村記久子
芥川賞作家が贈る、32歳の遠距離共感小説
お肌のくすみ、気になる薄毛、周りの評価、人間関係--32歳は希望も欲望も薄れていく歳だった。誕生日と苗字と年齢が同じ男女の1年間をユーモラスに描く、著者2年ぶりの傑作長編。
ワーカーズ・ダイジェスト
2011年3月発行 集英社 194p
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
32歳は、欲望も希望も薄れていく年だった。けれど、きっと悪いことばかりじゃない。重信:東京の建設会社に勤める。奈加子:大阪のデザイン事務所に勤め、副業でライターの仕事をこなす。偶然出会った2人は、年齢も、苗字も、誕生日まで同じ。肉体的にも精神的にもさまざまな災難がふりかかる32歳の1年間、ふたりは別々に、けれどどこかで繋がりを感じながら生きていく-。頑張るあなたに贈る、遠距離“共感”物語。
【目次】(「BOOK」データベースより)
ワーカーズ・ダイジェスト/オノウエさんの不在
感想
けっこう厳しい状況の中で働くお話だけど
ユーモラスな雰囲気もあります。
主人公と同じ 30代・独身・会社員の人は
いろいろと「あるある!」という感じで
読めるのではないでしょうか。
働いている方 大変な毎日でしょうが
どうぞ頑張って!と思いながら
読み終えました。
- [2012/01/10 15:11]
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ポトスライムの舟 津村記久子
ポトスライムの舟
2009年2月発行 講談社 186p
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
お金がなくても、思いっきり無理をしなくても、夢は毎日育ててゆける。契約社員ナガセ29歳、彼女の目標は、自分の年収と同じ世界一周旅行の費用を貯めること、総額163万円。第140回芥川賞受賞作。
【目次】(「BOOK」データベースより)
ポトスライムの舟/十二月の窓辺
感想
すんなり読める芥川賞受賞作品。
私にとっては 珍しいことかもしれません。
となると インパクトに欠けるのかも。
登場人物の中では そよ乃がちょっと鬱陶しい感じ。
自分のことばかり語るのは 気をつけないとね。
併録の「十二月の窓辺」の方は
なかなかに強烈な職場の様子が描かれています。
こんな上司・先輩がいたら 病気になっても
なんの不思議もないのではないでしょうか。
苦しんでいたのが 主人公のツガワだけでないのが
救いのないところです。
- [2012/01/10 14:37]
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婚礼、葬礼、その他 津村記久子
2008年7月発行 文藝春秋 148p
【内容情報】(「BOOK」データベースより)
友人の結婚式に出席中、上司の親の葬儀に呼び出されたOLヨシノのてんやわんやな一日。若者たちの群像小説「冷たい十字路」併録。
【目次】(「BOOK」データベースより)
婚礼、葬礼、その他/冷たい十字路
感想
「婚礼、葬礼、その他」・・・
人を呼びつけることが出来なくて でも
人から頻繁に呼ばれる性質を持つヨシノが
屋久島旅行の予約をした日に 友だちから結婚式の招待状が到着して
しかも2次会の幹事まで頼まれて 即日旅行予約をキャンセルし
結婚式当日は これから披露宴という時に
会社の上司の親のお通夜に呼び出され
故人の孫の話し相手になってやり
故人の愛人と本妻のけんかを仲裁し・・・
といった ヨシノのてんやわんやな一日なんですが
(上記以外にも たくさん事件は起こります)
文体がつるつるっとしているので あんまり大変とも思えず
するする、くすくすと読めてしまいます。
ヨシノが 頼まれごとに結局は一生懸命で それで
人から頻繁に呼ばれるんでしょうね。
旅行<結婚式<お通夜という数式が面白いです。
「冷たい十字路」・・・
ある交差点で起こった交通事故をめぐる人々の独白でつづられていく
それぞれの思い。
「婚礼、葬礼、その他」が温かな印象を残すのに対して
こちらはタイトルどおり ひんやりしたものを感じさせます。
- [2012/01/10 14:26]
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